コラム

イトシンTVで対局した(2)エルモを巡る冒険

エルモを巡る冒険

前回の復習!

前回のあらすじ:将棋ウォーズで10秒指してたらプロ棋士の伊藤真吾先生とマッチングしたぜ!イェイイェイ!

前回の更新:イトシンTVで対局した(1)心の中で小さな棋士が正座する

前回の終了図(図2)

エルモ右銀急戦!

実戦の進行

(図2からの指し手)
△5二金左▲7八玉 △5四歩 ▲5九金 △1四歩 ▲1六歩 △1三香▲4六銀 △3二飛 ▲2六飛 △4二角 ▲5五歩(図3)

(図3)

▲5五歩で開戦となりましたが、このあたり数手の組み合わせも難しいところです。少々テクニカルになりますが、その微妙なところを解説していきたいと思います。

△6四歩をめぐる駆け引き

前回序盤の駆け引きの中で、僕側が一手で▲7九金といけるところを、▲7八金~▲7九金と迂回して一手損してしまった――ということありました。急戦を目指しているのに一手無駄にして大丈夫?というのは当然出てくる疑問でしょう。

次の二つの図面を見比べてみてください。

(A図)△6四歩を突いていない

(B図)△6四歩を突いている
違いは△6四歩を突いているかだけです。B図は本譜のように居飛車が一手損しているケースですね。もちろん、振り飛車側には他にも候補手があるのですが、△6四歩も美濃囲いを発展させていくためには欠かせない一手です。居飛車側が仕掛けてこなければ、美濃→高美濃→銀冠と組み替えていって、自然と作戦勝ちになっていきます。

対急戦で居飛車が仕掛けてこなければ、
美濃囲い→高美濃囲い→銀冠
と何も考えず囲いを進化させていくだけで振り飛車が作戦勝ちになります。初級者~上級者の将棋で振り飛車が優秀である理由のひとつですね。

ただ、△6四歩と一手多く指すことはメリットばかりではありません。あちらが立てばこちらが立たぬ・・・・・・。全てにおいて都合のよい手はなかなかないのです。

(A図以下のたとえばの手順)
△4二角▲3八飛△3五歩▲同銀△6四角(C図)

(C図)

A図では先手の仕掛けに対し、△6四歩と突かなかったことを活かして△6四角!が絶好の活用で、C図は後手優勢です。△6四歩と突いているB図から同じ展開を辿ると△6四角がないので先手指しやすい形勢となります。

この△6四歩を突いているかいないかで、急戦の成否が変わってくる――――というのは「羽生の頭脳」対四間飛車急戦編のテーマだったと記憶しています。(あと、△1二香をめぐる駆け引きもあったと記憶しています)

本譜のイトシン先生の指し回しも「△6四歩はギリギリまで突かないぞ!という意志を感じました。△6四歩と突くかわりに、△1四歩や△1三香で待機する選択です。

10秒将棋ですが、水面下で△6四歩をめぐる駆け引きがあったのでした

▲4六銀か▲4六歩か

エルモ急戦には大きく分けて二つの指し方があります。

右銀急戦! ▲5七銀右~▲4六銀と活用

▲4六歩急戦! ▲4五歩からの仕掛けを狙う
▲4六銀のほうが明快でおすすめですが、振り飛車側も研究し、対策を練ってくるので変化球を持っておくことが大切なのです。あとはエルモ側の右金の位置ですね。「▲5九金」「▲4八金」「▲4九金」「▲5八金」などのパターンがあり、それを▲4六銀、▲4六歩と組み合わせることで的を絞らせないようにできるのです。

こうした複雑さもプロが公式戦でエルモを選択する理由のひとつなのでしょうね。

今回はちょっとマニアックな内容になってしまいました。次回は仕掛け以降を見ていきます。

(つづく)
次回→イトシンTVで対局した(3)見かけの老獪さに価値はない

参考:
四間飛車vsエルモ囲い右銀急戦 将棋ウォーズ実況 第21回/イトシンTV

本の紹介

↑観る将必携の将棋説明本。創作物に将棋を登場させたいクリエイターも必見です!